作曲家・五十嵐真理さんへのインタビュー 第三週

2009年3月19日 in インタビュー,

ノタの森の原動力の一つには、経験を後世に伝えていくことは先人の経験を享受している者の責務という考えがあります。その一つとして、特にこれから音楽を仕事にしようと考えている人たちへ向けて、音楽制作の現場で働くプロフェッショナルへのインタビューの短期連載を行っています。今回は経験豊かな作曲家である五十嵐真理さんに協力をお願いし、彼に4つの質問を投げかけその回答をまとめました。毎週1問ずつ掲載しています。現場で働いている人の生の声を楽しんでください!

五十嵐真理五十嵐 真理 いがらし まこと
作曲家
{略歴}

1965年(東京オリンピックの翌年)北海道生まれ。高校卒業後、青山レコーディングスクールにて作編曲を専攻。小田裕一郎、尾関裕司、岡野智光、桜井優典らに師事。音楽関係の仕事を探すことを全くせずに地元で家業の運送屋を手伝いつつアマチュアバンド活動に精を出す。バンド仲間が地元の音楽制作会社に就職し、そのコネで同社に潜り込む(去年末に同社を退社)。長年にわたりテレビ・ラジオのCM音楽、舞台音楽、ダンスチームの音楽、ゲーム音楽など凄まじい数の作編曲をこなし、現在に至る。

ホームページ:音楽制作 五十嵐真理のホヲムペエジ ブログ:五十嵐真理のBootRock"


{作品}

CM音楽(のぼりべつクマ牧場、日専連札幌、ぎょれん/ホタテ、全自動パワー融雪機モンスター、アップル車検など)
ゲーム音楽(天地無用 魅御理温泉湯けむりの旅 [SS]、カルドセプトSAGA [XBOX360]、ファミリートレーナー [Wii]、江戸川乱歩の怪人二十面相DS [Nintendo DS]など)
その他多数。

質問3.五十嵐さんが思う日本の音楽業界の好きな面と嫌いな面は?

難題です。
第2週で「比較する事に    よってアイディアの正しさを証明する」と書いていたのですが、
今回は比較が出来           ない。
なぜなら自分               が「日本の音楽業界」以外を体験していないから。
アメリカやイギリス、           あるいは韓国の音楽業界を多少知っているとしても、
記事で読んだ物に           過ぎないので、
とても説得力の             ある事を言えるとは思えない。
得意手を封じられて          しまったので、
自分の主戦場である        CMソングを作る過程で話を進めます。

仕事の中で「好きな面」を挙げるとするなら、「自分の可能性をどんどん拡げてくれる」こと。

仕事を進めていく上で、クライアントが「自分のどこを評価しているのか?」は
キチンと把握していなければいけません。
作家はそれぞれ「個性」を売り物にしているのであって
先方も「誰でも良い」と思ってオーダーするわけではありません。
何らかの狙いがあって発注先を決めるのですから、
自分が「何を求められているか?」を理解していなければ
良い仕事に結びつく可能性は著しく低い。

そこで重要なのが、 言葉のキャッチボール。
打ち合わせの時は、積極的に発言をしてみる。
もちろん空気を読まないトンチンカンな発言は、
自分以外の誰かに恥をかかせる事にも
なりかねないので注意が必要です。
そうならないためには、
普段からキャッチボールの訓練をしておく事だなぁと、つくづく思います。
積極的なアピール。
相手を知り、自分を知ってもらう にはこれが一番。

つまり、
「言葉のかわりに音楽で自分を表現するんだ」
「対人関係が苦手だから、一人で音楽を作るんだ」
と考えていて言葉のキャッチボールを疎かにしていると、趣味の域を超えられないのです(アーティストになれる可能性はありますが)。

また、たまに自分の得意分野ではない箇所を評価される事もあります。

こいつがい。
五十嵐真理だって「前回はマグレだった」わけだから。でも、マグレじゃなくなるように努力する事で得意分野が増える場合もある。実際、自分は元々「歌手」の自覚はなかったけど、「仮歌」が評価されてそのまま採用されてしまい、それが何回か続いて、いつのまにやら「歌うたい」になっていた。

反対に「嫌いな面」を挙げるとするなら、「限度を超えた無茶なスケジュール」

CMソングは15秒や30秒で「クライアントが視聴者に伝えたい事」を的確に伝えなければならない。頭とおしりの0.5秒は音を入れない事になっているから、15秒CMの音は14秒にしなければならない。「歩くくらいの早さ」のテンポだと7小節ぐらい。J-POPが4~5分くらいなのと比べるとあまりに短い。
楽譜昔のヒット曲は8小節や4小節のサビも多数あったけど、最近のヒット曲のサビは16小節くらいあるからその半分程度の長さだ。それでも頑張るのです。Aメロ2小節とサビ4小節とか。とんでもなく作為的な曲を、そうとは感じさせないように作るのです。

歌詞は制作会社や監督が考えてくれる事も多いのですが、自分で作る場合もあります。歌詞はそんなにたくさんは入れる事が出来ないので無駄無く、無理無く、伝わる言葉を選びます。J-POPはどんどんオーバーな表現になっていますが、CMでそれをやるとJAROに怒られてしまいますから、同義語や類義語、外来語等を駆使していろんな切り口で知恵を絞って広告を作るのです。

こういった大変な作業が発生するのに、企画がなかなか決まらないため、
「朝の10時にオーダーが来て、夕方には納品しなければならない」ような
仕事も稀にあるので、それはもう大変なのです。

ちくしょう!

こんなの無茶だよ!

常識はずれだよ~~!

と思いつつ、
「こんな短い時間でもなんとかしてくれる」と信頼されているんだなぁ、
と多少有頂天にもなりつつ、オーダーされたからには期待を裏切らずに納品します。
が、
「ちゃんとした仕事を望むなら、ちゃんとしたスケジュールを組んで欲しい!」

ただ、スキルが上がってくるとマグレが得意分野に変わるのと同様に、「無理」と思えた締め切りにも間に合わせる事が出来るようになります。
タイトなスケジュールが自分をここまで鍛えてくれたのは紛れもない事実 だから、
「嫌いな面」とか書いておきながら「好きな面」でもあります。

結局のところ「嫌いな面」を探してみたけど、そんなに思い浮かばなかったなぁ。

なんだかんだと楽しみながら仕事をしている

のだと改めて痛感です。

自分にとって大切な事柄に関しては「好きと嫌いは表裏一体」なのかもしれません。

第三週目のインタビューはこれで終わりです。来週はいよいよ最終回。 『質問4.五十嵐さんにとって音楽とは?』を掲載します。お楽しみに!

インタビュー企画担当/西尾康成

本人写真4枚 (c) 五十嵐真理
おまけ。

実は今回のインタビューは、この約2倍の量がありました。編集する上でここに入れられなかった記事は「ノタの森」第三週の番外編として五十嵐真理さんのブログで一人立ちしています。そちらもお楽しみください。

第一週.五十嵐さんなりの仕事での音楽制作のこだわりや心がけは?
第二週.五十嵐さんが感じる仕事ならではの楽しみとは?
第三週.五十嵐さんが思う日本の音楽業界の好きな面と嫌いな面は?
第四週.五十嵐さんにとって音楽とは?
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