プロデューサー・西尾公孝さんへのインタビュー

2010年3月15日 in インタビュー,

ノタの森の原動力の一つには、経験を後世に伝えていくことは先人の経験を享受してきた者の責務という考えがあります。その一つとして、特にこれから音楽を仕事にしようと考えている人たちへ向けて、音楽制作の現場で働くプロフェッショナルへのインタビューを行っています。今回は音楽家たちの音楽発信に尽力している西尾公孝さんに協力をお願いし、音楽をプロデュースしていく中で心がけている事や実践している事をまとめました。現場で働いている人の生の声を楽しんでください!

西尾公孝西尾 公孝 にしお きみたか
CGMチーム(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)
{略歴}

1978年生奈良生まれ。高校卒業後、大阪スクールオブミュージックにて作編曲を専攻。1年で専門学校を離れ、大阪のマルチメディア企業に飛び込む。印刷営業とMA※1スタジオエンジニアとして二束のワラジで2年間、MAエンジニア、映像制作スタッフとして1年間、計3年間を大阪で過ごし基礎を。その後、北の大地札幌の音楽制作会社に就職。スタジオエンジニアをスタートとし、ゲーム音楽、携帯電話の着信音などのディレクション、プロデュースなど、音に関するあらゆる業務に5年間にわたり携わる。その後フリーとして大阪、京都などでMA作業、映像制作進行など、映像分野を中心にした活動を行った後、再び札幌へ。現在クリプトン・フューチャー・メディア株式会社に所属。CGM関連の事業を中心にクリエーターの音楽発信の拡大に取り組む。
(※1.MA…映像への整音作業(音付け、ノイズチェック除去、レベル調整等)の総称。これに携わる人をMAエンジニアと呼ぶ。)


{作品}

神戸コレクション映像(MA、楽曲、ジングル※2制作など)
他、CM(mix)、ゲーム音楽(ディレクション)、等多数。
(※2.ジングル…放送の節目に流す数秒の短い音楽。)

音楽をプロデュースするために必要なことは?

音楽に限ったことではないと思いますが、プロデュースをするにあたり必要なことは

「明確な目的」を持つこと

だと感じています。そのプロダクトが何のためのものなのかが明らかになっていないと、選択を迫られた時に的確なジャッジを行うことができません。ただ、あまり窮屈にしすぎると意外性を締め出すことになり、プロダクトに面白みがなくなってしまう場合があります。偶然のひらめきを許容する寛容さ(遊び)も必要ですね。

例えば以前ドラマの音楽を手がけたときのことですが、“和”をテーマにした回があったんです。和楽器を使用したりそれっぽい旋律をちりばめていたり、自分の中で及第点は出ていたのですが、どうも落ちなくて・・・。ダメもとで普段使っていないエグ目のシンセ※3の音を使ってみたんです。FM音源※4の金属的な音色にディストーション※5をかけたような。そうしたら意外にはまり、不思議と幽玄な雰囲気をだすことができました。当時まだ少なかったHD映像とあいまってよい作品になったと記憶しています。
(※3.シンセ…シンセサイザーの略。電気的に音を作り出す音楽機材。)
(※4.FM音源…特殊な計算で電気的な音色を作り出す音楽機材。)
(※5.ディストーション…ロックのエレキギターの歪んだ音色のような、音が割れた音色を作り出す効果や装置。)

又、ゲームの音楽を手がけたときのことですが、楽曲チェックの際、音源の立ち上げを間違え、ドラムがピアノの音色になってしまったことがありました。これが意外とイケたんですね(笑)。少し手直しをして1曲として仕上げました。普通ならきっとNGだと思いますが・・・。

偶然のひらめきを許容する寛容さ(遊び)にはバランスが大切です。このバランスはどうやれば身につくのかは僕もわかりませんが、

「自分が完全だと思わない。ひとの話を受け入れる姿勢をもつ」

といった気持ちが重要だと思います。時間がないからといって自分自身やスタッフの提案を頭ごなしに否定せず、目的達成をよりよい形で迎えることができると判断できるものは、時間が許す限りどんどん取りいれるべきかと。もちろん提案が目的と乖離(かいり)してはダメですが・・・。時間や予算などに余裕が無い中でも気持ちに余裕を持ちつつ目的達成に取り組むことが、よいプロデュースにつながるのかもしれません。

今の自分の課題は?
ノタ歩く(インタビュー西尾公孝挿絵)

今の自分の課題は「効率化」です。無駄な時間を減らし新しいことに取り組む時間を作るようにしたいと考えています。

生活を朝型にシフトする、
ディスクをキレイに整頓する、
PCのファイル整頓をする

といった当たり前のことなのですが、今まで忙しいと言い訳をして後回しにしてきたものが沢山あるので・・・。

あとは適度な運動ですね。1日40分程度は歩くようにしています。病気になるのは大きな時間のロスなので、最も避けたいところです。


一番楽しい瞬間は?

楽しい瞬間とは少し異なりますが、

モチベーションが上がるのはンチのとき

ですね(笑)。窮地に立たされた時どのようにそれを乗り切ることができるか?今までの自分の知識や経験をフル活用して目の前の障害を乗り越えられたときは最高に気持ちよい瞬間です。ただピンチになる原因は己の身から出た錆であることが多いので、同じぐらいの反省や後悔も後からやってきます・・・。喜びと後悔はイーブンですね。

純粋なところでいくと、やはり自分が携わった仕事が誰かに届いたときです。イベントに来場したお客さんが音楽をほめて帰ったのを耳にしたり、自らが携わったCDやゲームなどの製品が店舗で売れてゆくのをみたりなど、直接的であれ間接的であれ、自分が関った作品が人から認められるのはやはり嬉しいです。プロデュースの醍醐味だと感じています。

最近は“新しい何か”を考えることが楽しいです。点と点であるアイディア同士がつながって、線となり面となりそして立体となっていく。妄想を形にできでばいいですよね。

今後どういった活動をしたい?

たくさんを読む。
たくさんと会う。
たくさんにでる。

この3つです。自分はどういった考えをもつ人物なのか、また自分の能力はいったいどういったものなのかを客観的に見ることができるように自分自身の理解を深めていきたいです。

自分探しの旅(笑)に出かけていますので、どこかで皆さんとお会いできるかもしれませんね。そのときは逃げずに話に付き合っていただければ幸いです。では。

編集後記

まずは多忙な中このインタビュー企画に協力してくれた西尾公孝さんに、ノタの森スタッフ一同よりありがとう!

さて今回のインタビューでは、ミックス、MA、プロデュースなど多くの経験を持つ西尾公孝さんのプロデュースの面にスポットをあてて記事をまとめました。“やたら仕事が速い”西尾公孝さんには聞きたいことが山ほどありすぎるので、諸々の行動で常に心に置いている事を引き出して残そうと決めました。それでも西尾公孝さんの面白さを十分に引き出すには至りませんでしたが、クリエーターの音楽発信の拡大に努める熱意、気構えといった根本的な部分が少しでも伝わってくれればとても嬉しい。

インタビュー企画担当/西尾康成
本人写真 (c) 西尾公孝
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