ビームライフルの発射音の作り方

2008年11月22日 in ハウツー, 効果音の作り方,

ロボットもののアニメーションには必ず出てくるビームライフル。その巨大なライフル状の武器からビームの塊を発射するという空想上のアクションに合う効果音の作り方だよ。ここでは既にノタの森にある効果音と、別録りしたシンセサイザーの電子音を使って作成するよ。パソコン上での波形処理ばかりなのでうまく伝わらないかもしれないけど、一つの処理での音の変化がとても大きいので、文章を流し読みして音声ファイルだけを追って音色の変化を楽しむこともできるよ。

材料

試聴:シンセサイザーの単純な電子音
クラッカーの破裂音
打撃音

ビームライフルの発射音のイメージ画像 ビームライフルを発射するというアクション自体が非現実的なため、最初にきちんと絵をイメージしてから効果音を作り始める。ここでは人間が乗り込んで操縦するタイプのロボットが装備しているライフル状の武器から短めのビームがバシューンと発射されるところイメージしている。

 イメージ画像を見ながら音の骨格を決める。つかみ所の無いだらしない効果音にならないように、最初にしっかりと組み立てておく。

 物理的に爆発が起きて弾が飛ぶので、『発射した瞬間の爆発音』と『ビームが飛んでいく音』を時間軸にそってくっつければできる。空想上の武器なので、その計り知れない威力を表現するのにもう一つ音を用意する。

1.ピーとかポーという単純なシンセサイザーの電子音
2.既にノタの森にある爆竹の爆発音から作ったクラッカーの破裂音
3.同じくノタの森にある打撃音

 合計3つの音で作ることにする。それらを軸にイメージ画像にある飛び散ったビームの粒子や、白い輪で描いてあるビームが飛び出した時の衝撃波や、ビームが突き進んでいく勢いを表す大気の流れなどを作りこんでいく。


作り方 -シンセ音の加工編-

1.シンセ音をサンプリングする。

試聴:ノコギリ波と矩形波をブレンドした音

矩形波の1オクターブ上にノコギリ波を重ねている。合成比率は矩形波:ノコギリ波≒6:4。カットオフとレゾナンスを上げてビチビチした明るめのエグい音にしている。

このシンセサイザーの音はどんな音でもよい。ここでは基本的な作り方を示すためにシンプルな音を使ったが、この段階からかなり凝った音色を用意しても面白い。

2.シンセ音にピッチベンドをかける。

試聴:ピッチベンドをかけたシンセ音
ビームライフルの発射音の作り方「作り方2」シンセ音にピッチベンドをかけてドップラー効果を出す。

発射されたビームの塊が遠ざかっていくイメージを音にしたいので、救急車が遠ざかっていくとサイレンの音が下がっていくドップラー効果を参考にして音の高さを下げていく。このとき、発射のアタック感と同時よりも少し遅らせてから下がっていく音が聞こえるほうがビームの動きをよく出せる。ここでは音の出だしは大きく上下に変化させてから、急降下させている。ビームが突き進む速度感を出すために、ピッチを下げるスピードを速めにする。ここではピッチに比例して音の長さも変化するエフェクターを使っている。


3.シンセ音にリバーブをかける。

試聴:リバーブをかけたシンセ音

このリバーブは距離感を出すための空間処理ではなく、破壊的なニュアンスを出すため最初の処理。この後の工程で完了する。拳銃の発射音や爆発音の作成には必ず使うテクニック。

リバーブ成分を原音にそっくりかぶせたいので、掛け始めは同時に、そしてリリースは必要ないので短くする。シンセの原音の芯の部分は残したいので、それが消えない程度にここでは原音の3割ほどのリバーブ成分を足した。

このシンセ音の加工で注意する点は、音の芯を残しつつ膨らませていくこと。

4.シンセ音にディストーションをかける。

試聴:ディストーションをかけたシンセ音

前の工程でかけたリバーブ成分をこのディストーションで歪ませて、破壊的なゴホォーッといった轟音を作り出す。音楽的にエフェクターを使う場合は《ディストーション → リバーブ》の順番で掛けるが、楽音ではなく雑音を作る効果音制作では掛ける順番を逆にすることはテクニックの一つ。拳銃の発射音や爆発音だけでなく打撃音の作成にも使っている。この手法だとリバーブ成分の長さを調節するだけで爆発の長さを自由に調節できる。

5.シンセ音にコーラスで厚みを出す。

試聴:コーラスをかけたシンセ音

芯の塊のようにカチカチなシンセ音を、コーラスを使ってボリューム感を出す。音の芯が完全に消えない程度に厚みを出す。ここではブルブル震わせるタイプのコーラスを使った。トレモロをかませてからコーラスをかけてもよい。

 ビームのを表すシンセサイザーの音の加工はこれでおしまい。次の工程6からクラッカーの破裂音を加工していく。

作り方 -破裂音の加工編-

6.破裂音の音高を下げる。

試聴:ピッチダウンした破裂音

このクラッカーの破裂音は、ライフルからビームが発射したときの勢いを出すために使う。元ネタの音の高さではビームライフルの発射音に使うと考えるとオモチャっぽいので、馴染む程度に下げる。ここでは音の長さを変えずに純粋にピッチだけ変化させるエフェクターを使って1オクターブ下げた。  元ネタ:クラッカーの破裂音

この破裂音を加工するときの注意点は、現実味を消すこと。身近に存在する何かを連想させてしまう音だと、ビームライフルという架空の武器の凄みがなくなる。

7.破裂音にイコライザーで表情をつける。

試聴:周波数の成分を調節した破裂音
ビームライフルの発射音の作り方「作り方7」シンセ音にイコライザーで表情をつける。

少し低域と高域を持ち上げて中域をおさえている。この破裂音は低域がすっからかんでふわふわ浮いた可愛い感じがするので、支える土台を作るイメージで低音を少し持ち上げて落ち着かせ、高域を少し上げて明瞭感を損なわせないようにした。


8.ディレイで発射の衝撃波を演出する。

試聴:ディレイをかけた破裂音
衝撃波が広がるイメージ画像

ビームを発射した直後に周囲に衝撃波が広がるイメージを作り出すために、ディレイを使って1回だけ音を返す。この加工をすることで、溜まったエネルギーが一気にはじけ飛ぶ瞬発力を感じさせることが出来る。

気をつける点は、音を返すタイミング。ディレイの間隔を長くしすぎるとビームライフルを発射するシーン自体のスピード感についていけなくなり、逆に短くしすぎると勢いを出す目的を達成できない。ここでは91ミリ秒で原音の6割の量を返す設定にした。


9.破裂音にリバーブをかける。

試聴:リバーブをかけた破裂音
ビームが空気を押しのけて進むイメージ画像

ビームを表現するシンセ音の加工のところでやったのと同じく、リバーブ成分にディストーションをかけて爆発のエネルギーがつくりだす破壊感を演出するために必要なゴホォーという轟音を作る処理。同時にここではイメージ画像にある空気の流れを表した青白い模様の部分を作り出す。発射されて目標に突き進んでいくビームの塊が空気を押しのけている感じを出したいので、リバーブの長さを長めに設定する。


10.破裂音にディストーションをかける。

試聴:ディストーションをかけた破裂音

リバーブ成分にディストーションをかけて轟音を作り出す。この音が工程5で完成させたシンセ音を包み込むので、最後に合成した時に十分な重量感を出すことが出来る。

11.破裂音にフランジャーをかける。

試聴:フランジャーをかけた破裂音

リバーブとディストーションを使って作り出した轟音にフランジャーをかけてドップラー効果のような音高の変化を作り、ビームが遠ざかっていくイメージを演出する。既にシンセ音自体にピッチダウンをかけているので、このフランジャーの成分を沢山だす必要は無い。高域のほうでカハァーッ響く歪んだ残響音はビームライフルの凄みを表現するのに使いたいので、フランジャーは2割程度にした。

ビームを発射したときの勢いを出すための音の加工はこれでおしまい。次の工程12から打撃音を加工していく。

作り方 -打撃音の加工編-

12.打撃音の音高を調節する。

試聴:ピッチシフターで音の高さを下げた打撃音

ここまでの工程でビームライフルの発射音に大事なビーム自体が突き進む音と発射した時の勢いを出す音を作った。これだけでは重量感や力強さが無いので、ここからそれを出すための音を作っていく。そのためにここで選んだ音は「爆発と武器」のNo.66にある打撃音。まずはその打撃音の音高を調節しする。先に作ったシンセ音と破裂音を見ながら、それらの足りない部分を補ってしっくりくる高さにする。ここでは音の長さを変えずに純粋にピッチだけ変化させるエフェクターを使って元ネタの音高を1オクターブ下げた。  元ネタ:打撃音

13.打撃音にリバーブをかける。

試聴:リバーブをかけた打撃音

この音にも爆発の轟音が欲しいので、それを作るためにまずはリバーブをかける。この音はビームを発射した瞬間の重量感を出すことが一番の目的なので、工程9でやった破裂音の時のように長いリバーブをかける必要はない。また、この後の工程で別のことに使いたいのであっさり目の減衰にする。

14.打撃音にディストーションをかける。

試聴:ディストーションをかけた打撃音

リバーブ成分にディストーションをかけて破壊的なイメージの音を作り出す。打撃音はもともと現実味が無い音だったが、このディストーションの処理で一層現実味がなくなった。ビームライフルの発射音を縁の下で支えさせるのに丁度良い。

15.打撃音にフランジャーをかける。

試聴:フランジャーをかけた打撃音
ビームの粒子が四散して自然消滅するイメージ画像

ディストーションが掛かったリバーブ成分にフランジャーをかけて、発射直後に銃口の周りに残ったわずかなビームの粒子が四散して自然消滅するところを表現する。イメージ画像にある赤と黄色の斑点がビームの粒子が飛び散っている様子。掛けるフランジャーのタイプは、ピッチが一旦下がってすぐ上がっていくようなものにする。シュワッと粒子が消えるイメージ。工程13で掛けたリバーブが減衰しきるタイミングにフランジャーのピッチが上がりきるタイミングが合うようにする。フランジャーの量は2割程度。

ビームを発射した時の重量感や力強さを出すための音の加工はこれでおしまい。次の工程16からそれぞれ準備した3つの音を合成していく。完成まであとちょっと!!


作り方 -合成編-

16.3つの音をミックスする。

試聴:ミックスした音
ビームライフルの発射音のイメージ画像

ここまで別々に作ってきた3つの音を合成する。-シンセ音の加工編-で作成した音は、ビームの音は発射時のアタック音の減衰とクロスフェードしながら顔を出すようにし、-破裂音の加工編-で作成した音は、アタックの強さとドップラー効果の聞こえ具合に注意し、-打撃音の加工編-で作成した音は、重量感と力強さを増す低音の量とビームの粒子が消えていくイメージを表現したフランジャー成分の聞こえ具合に注意しながらミックスする。


17.コンプレッサーとノーマライズで音圧を上げる。

試聴:持ち上げた音
ビームライフルの発射音の作り方「作り方17」音圧と音量をかせぐ。

最初のアタックの音の一部分が大きすぎて、その後の音量と音圧が物足りなくなっているので、軽くコンプレッサーを掛けて膨らませてからノーマライズして許容量ギリギリまで持ち上げる。


18.フェードアウトをかける。

試聴:フェードアウトした音
ビームライフルの発射音の作り方「作り方18」フェードアウトをした波形の画像。

この効果音自体の長さを決める。長めにしたければゆっくり減衰させ、短くしたければ急なフェードアウトにする。あまり減衰具合がゆっくりだと、ビームの形状が長くつながった状態で銃口から出続けているイメージになるので、適度な長さで切る。これなら実際に使う時、長めのシーンにも短めのシーンにもボリュームの調整だけで対応できる。


19.余計な波形をカットして整える。

ビームライフルの発射音の作り方「作り方18」フェードアウトをした波形の画像。

波形のいらない部分を綺麗に切り取って完成。

試聴:ビームライフルの発射音

作り始めはこんな音。

試聴:シンセ音
クラッカーの破裂音
打撃音


ビームライフルの発射音のイメージ画像


20.おまけ。

試聴:今完成したばかりのビームライフルの発射音

このビームライフルの音の作り方を基本にして、主にそのシンセ音の部分に変更を加え下の4つの発射音を作った。

試聴:ビームライフルの発射音 バリエーション1

三角波と矩形波を組み合わせた電子音に少し変化を加え、その後に掛けるエフェクトを変えた。

試聴:ビームライフルの発射音 バリエーション2

シンセ音を「チェンジ(長)」のNo.9に置き換えて加工した。

試聴:ビームライフルの発射音 バリエーション3

シンセ音を「チェンジ(長)」のNo.6に置き換えて加工した。

試聴:ビームライフルの発射音 バリエーション4

シンセ音を「チェンジ(長)」のNo.20に置き換えて加工し、最初の爆発音と同じタイミングに「ドアと窓」のNo.28を加工した音を足した。

記事/西尾康成

スポンサードリンク
PlayStation 4 ジェット・ブラック 500GB(CUH-2000AB01)

【国内正規品】 AVID ProToolsソフトウェア Pro Tools Activation Card (ProTools10) PROTOOLS10
【国内正規品】 AVID ProToolsソフトウェア Pro Tools Activation Card (ProTools10) PROTOOLS10