波の音の作り方

2008年11月10日 in ハウツー, 効果音の作り方,

浜辺や海岸や湖の波打ち際で聞こえてくる、波が岸に当たって戻るときの音の作り方だよ。波の音の作り方はとても簡単で、ザルの中で豆を転がすという古典的な方法を使えば、デジタル処理をしなくても立派な効果音を作ることができるよ。その作り方を踏まえながらここではもう少しアイディアと手間を加えて、傾斜の緩やかな浜辺に滑り込む波、砂利だらけの岸に押し寄せる波、岩場に衝突する波、傾斜のきつい砂浜にぶつかる波といったようないろんな種類の波を作るための方法を、複数の材料を組み合わせた実験をしながら基本的な波の音を完成させて紹介してるよ。

材料

傘 1本
小豆 500g
波の音の作り方「材料」傘、小豆

ここでは小豆と傘を使って波の音を作る。波の音の作成には、デジタルの編集技術より小豆をコントロールするアナログの技術が必要。傘と小豆だけでなくザルや大豆なども使っていろんな組み合わせで音を出して、目的の波の音に仕上げる。


作り方

1.開いた傘の中に小豆を入れて適度な速さで回す。

試聴:小豆を動かした音
波の音の作り方「作り方1」小豆が入った傘を回す。

傘を少し傾けてゆっくり回すと小さく静かな波になるり、小豆がこぼれる寸前まで傾け具合を大きくし回す速度を上げると、勢いが在る大きな波を作り出すことができる。動きを調節して、自然な感じの波を作り出す。必要な長さに録音した音を、任意の長さに切り取る。ここではループして使える効果音を作るので、違和感なくループできるポイントで切り出した。


波の音の作り方「作り方1」材料選び:小豆とザル
試聴:小豆とザル

傘では出すことができないとても乾いた高域の音が密集している。ここでは採用しなかったが、波の音を作るための一材料として欠かせない。ザルは、小豆が動き出す傾け具合がシビアで、コントロールするのが難しい。動いたと思ったらあっという間に反対側に全部移動して固まって止まってしまう。このサイズのザルで思い通りの波の音を出すために、小豆の動きを止めずに強弱をつけるのは、コツがありとても練習が必要になる。


波の音の作り方「作り方1」材料選び:小豆と小さい傘
試聴:小豆と小さい傘

動かす技術をほとんど必要としない。傘を少し傾けてゆっくり回すだけで、小豆が自然にばらけて動きだす。止まる時も自然になめらかにばらける。ザルを使ったときの音に比べると、低音のうなり感が強い。大海原の雄大さと全てを包み込むように押し寄せる荒波の強さや、大自然を前にした人間の小ささを表現する轟音の波を作りたい時に使える。また、音の高さが上がっていくポコポコポコという音が、水を連想させやすい。


波の音の作り方「作り方1」材料選び:大豆とザル
試聴:大豆とザル

大豆の動きを制御することは簡単だが、出せる音は波の音というよりビニールシートに勢いよく雨水が当たった音に近い。水を表現する効果音としては使えるが、今回の波の音の作成では使わない。


波の音の作り方「作り方1」材料選び:大豆と小さい傘
試聴:大豆と小さい傘

傘の骨と骨の三角のスペースにはまり込んでしまい、動く大豆がとても少なくなる。大豆の上をわずかな数の大豆が走る状態になってしまい、あからさまに何かが転がってる音になってしまう。小豆より転がる勢いが出やすいので、傘の中から大豆をこぼさずに操るのは少し難しい。


波の音の作り方「作り方1」材料選び:大豆と大きい傘
試聴:大豆と大きい傘

こちらも同じく傘の三角のスペースに大豆がはまってしまい、波としての音素材にはできない。傘を回しながらも上下に細かく震動させないとはまった大豆が出てこない。傘と大豆の組み合わせで波の音を作る場合、大量の大豆が必要になる。


2.加工しやすいように音量を上げる。

試聴:音量を上げた音

この時点で完成にしてもいいほど波の音になっているが、ここでは少し手を加えてこれとは違うキャラクターの音、傾斜が緩い海岸に押し寄せる波を間近で聞いた感じに仕上げていく。この音には、ひらけた海岸で聞こえてくるゴホーッという低音と、狭い海岸の波打ち際で聞こえてくるピシャッという高音が入っている。この二箇所の周波数帯に注目して加工していく。

3.イコライザーで表情をつける。

試聴:イコライザーで表情をつけた音
波の音の作り方「作り方3」イコライザーで波の雰囲気を作る。

1900Hz付近を動かして波の泡のシュワシュワ感を調節する。この録音した音には風のうなり音のような成分が入ってるので、その出し具合を200Hzから450Hz付近をいじって調節する。削る方向にいじると上の周波数のシュワシュワ感がめだって砂利の海岸に滑り込む軽い感じの波の音になり、表に出す方向にもっていくと大海原の雄大さを感じさせることができる。10000Hz付近の高域帯を持ち上げると、小豆が転がる感じが出て波の音から離れてしまうので注意。

この音だけでなく波の作り方の工程1でいろんな材料の組み合わせで出した音も、低域と高域の周波数の増減で表情を大きく変えることが出来る。低域を押さえて高域を持ち上げると南国リゾート風の暖かい波になり、低域を強く前に出すと寒空の冷たく厳しい波になる。

4.ピッチシフトで厚みを出す。

試聴:ピッチシフトした音を重ねた音

少し厚みと複雑さを出すために、ピッチシフトした音を重ねる。ここでは元の音から半音で5個半分の約550セント下げた音を、元の音量の4割の音量でミックスしている。

5.リバーブをかけて距離感を出す。

試聴:リバーブをかけた音

耳元で鳴っているほど近い音なので、少し距離を出して所々に混じっている小豆が転がった感の強い音を濁す。ここではループして使える効果音にするため、3コーラス分ループさせた音にリバーブをかける。1コーラスだけのかけても、出だしの音に終わりの音のリバーブ成分が含まれないため、リバーブがかかっている終わりとうまく繋がらずループできない。理論的には2コーラス分録音して2コーラス目を採用すればいいことになるが、実際はそううまくいかない。考えているように綺麗にループしないことがあるので、3コーラス目の頭まできちんと録音する。3コーラス目は頭の部分だけ録音してすぐ終ってよい。この後の処理で2コーラス目を抜き出す。

6.トリミングで2コーラス目を抜き出す。

試聴:トリミングした音
波の音の作り方「作り方6」必要な箇所を抜き出す。

前の工程でリバーブをかけた3コーラス分の音の1コーラス目と3コーラス目の頭を削って、真ん中の2コーラス目を採用する。2コーラス目の頭は、1コーラス目の終わりのリバーブ成分を含んだ音になっているので、2コーラス目の終わりからうまくループさせることができる。リバーブをかけたことで、最初に予定していたポイントでうまくループできない場合は、ポイントを少しずつずらしてループできるポイントをさぐる。


7.ノーマライズして最大まで音量を引き上げる。

波の音はザーっというノイズに近い音なので、あまり無理に音圧を上げることはない。自然な引き上げだけで完成とする。この波の音は「環境」のNo.31でダウンロードできる。


試聴:波の音

作り始めはこんな音。

試聴:小豆を動かした音

波の音を使ったサンプル映像
『ノタの森のCM No.2 -ビーチでランチ編-』

記事/西尾康成

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